VOCALOIDを生み出したヤマハから、ネットワーク上のサーバを利用して、音源にエフェクトなどをかけられる「クラウド型VST」とオンラインでセッションが出来る「NETDUETTO」が投入された。VOCALOIDに関しては、既に発表済みの VOCALOID-flex、NetVOCALOIDを使ったMETAL GEAR SOLID PEACE MAKER、頓智・およびグッドスマイルカンパニー、クリプトン・フューチャー・メディアと組んだ「セカイロイド」が発表されている。
ヤマハは2004年、ドイツの音楽ソフト企業Steinbergを買収し、100%子会社としている。自社のソフトウェアシンセを同社の代表的な音楽制作ソフトCubaseに組み込んだり、自社から出ているオーディオインタフェースにバンドルしたりといったことは行ってきたが、同社の技術を初めて積極的に活用しようというのが、「クラウド型VST」である。
YAMAHAはCubaseの技術を足がかりに、よりオープンなソフトシンセの共通プラットフォームを作ろう。そのときには、台数だけは多いNetbookや、このところ台頭してきたiPhoneなど、高機能な携帯デバイスも入れていきたいと考えた。
つまり、ハードウェア非依存にするための共通プラットフォームとして考えたのが、「クラウド型VST」だ。クラウドコンピューティングと楽器。一見するとレイテンシーなど相性がよくないみたいだが、実は既にYAMAHAが既に実用化しているものがある。NetVOCALOIDやNetぼかりすがそれだ。
NetVOCALOIDの応用例の1つとして、携帯電話から文字列とメロディーを指定すると、サーバ側でVOCALOIDが歌わせて、その結果を携帯に返してくれるというサービスがある。同じようなことが、VSTでも可能になる。
3月1日に行われたデモでは、Windows版CubaseにPlugin Dockというソフトを組み込んだものが使われた。ユーザーは、Plugin Dockを経由してDAWに入力されたデータを操作し、その処理をクラウドで行い、その結果をまたマシンに戻す。Plugin Dockからはまだ組み込まれていないプラグインを選択可能になっており、そこからさまざまなエフェクターを取得して、Cubaseに取り込まれているトラックに反映させる。
女優の浅井江理名さんが歌った「赤いスイートピー」のボーカルトラックを使ったデモでは、イコライザとリバーブ、そしてハーモニーエフェクトの Pitch Fixを使用した。そのすべてがクラウド経由。ネット越しで処理されるため、レイテンシー(遅延)が発生する。この場合は約2秒。
レイテンシーが大きすぎると使いものにならないケースも存在する。そういうときのために、ローカルマシンのCPUを使って処理するLocal Processingというオプションが用意されている。クラウドではなくなるが、その分レスポンスは速くなる。ローカル処理するかクラウド処理するかはユーザーが決められる。
クラウド化するメリットはローカルマシンの負荷軽減だけではない。VSTプラグインベンダーは、DAWソフトの中にショップを持つことができることになる。Plugin Dockの中に、1日利用とかフル機能とかのオプション付きでアプリを購入できる機能が付けば、iPhoneにおけるアプリ内課金のようなシステムも作り上げることができる。このコマースの部分で企業向けのSaaS提供で実績を持つ企業ビープラッツである。オンライン環境でのクラウド型VST販売という市場で海外への展開も視野に入れている。